私の好きな詩人、 まど みちおさんの詩に「つけものの おもし」 というのがあります。
つけものの おもし
つけものの おもしは
あれは なに してるんだ
あそんでいるようで
はたらいているようで
おこっているようで
わらっているようで
すわっているようで
ねころんでいるようで
ねぼけているようで
りきんでいるようで
こっちむきのようで
あっちむきのようで
おじいのようで
おばあのようで
つけものの おもしは
あれは なんだ
***
あそんでいるようで
はたらいているようで
のくだりは、思わず笑っていしまいます。
いつもあるものを、ジーッと眺めていると、「そもそも、どうして?」という思いにとらわれる時が、時々あります。
平仮名を特大サイズで書いているときや、簡単な漢字を人に聞かれて、あらためて説明するときなど、ふいに心に「・・・?」の思いがよぎる。 たとえば、平仮名の「ふ」は、私にとって、いつまでも半熟卵のように心もとなさを感じる文字です。
日常の風景と、しばらくの時間、目を見合わせていると、止まっていたものが心の中で動き出す。
静かな季節、その音に聞き入りたいと思います。